純情シンデレラ
どうしよう、と何度も思った。
でも、今はどうすることもできない。
しかし幸いなことに、電車はもうすぐ次の駅に着くはず。
電車が停まるその時に、ここからどうにかして移動するか。
それとも、思いっきり足を踏んづけてやるか、肘鉄・・・は、この人混み具合だと、あんまり役に立たないかも・・・。

なのに、痴漢男は、あれこれ考えていた私のお尻―――スカート越し―――に手を置いた。
ハッキリと。

な、なんて大胆な・・・!

私は思わず背筋をブルッと震わせた。
ゾッとした私の全身に、鳥肌が立つ。
どちらも恐怖心から出た咄嗟の反応だ。

今はもう、撃退プランを練っている場合じゃない!

最初は、「この私が?まさか」という驚きと怖さから、声が出なかった。
公のこの場で助けを呼ぶことが、恥ずかしくも思った。
元々、内気で目立つことが嫌いな私は、こんな形で注目されることなんて、全然望んでないのに。
もしかしたら、私の勘違いかもしれない。
いや。できれば私の勘違いであってほしかった・・・。

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