純情シンデレラ
「今日は一体、どうしたんですか?」
「ああ。実はね、僕、フランスへ行くことにしたんだ」
「え。じゃあ有栖川建設のお仕事は」
「辞めたよ。家族にも僕の恋人のことを話した。正直にね。ここまで来るのに3ヶ月かかってしまった。両親にも勘当されたよ。兄たちからは“おまえはもう俺の弟じゃない”と言われた」
「あ・・」
「でも僕はね、とても清々しい気分なんだ。今までずっと周囲の目を気にして、家族を欺いて生きてきたからだろうね。もうそんなことをする必要はないんだ」
「うん」と私は言いながら、何度も頷いた。

「僕、フランスには行くけど、ジャンがまだ僕のことを待っててくれているかは分からない。帰国するとき、別れることを前提で大喧嘩してしまったからね」
「そぅですか」
「でも僕は行く。ジャンに会いに。会って・・謝る。“君のことを愛していないなんて、嘘言ってごめんよ”って。それで許してもらえるかどうかは分からないけど」
「ゆ、ゆるして、くれますよ。ジャンさんだって、きっと・・まだ、有栖川さんのこと、愛しているから」

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