純情シンデレラ
シクシク泣きだした私を、有栖川さんがそっと抱きしめてくれた。
前回とは逆に、今度は有栖川さんが私を慰めてくれている。
有栖川さんの心は覚悟ができた分だけ強くなったのだろうと思うと、私はとても嬉しかった。

「それで・・・いつ、行くんですか?」
「今夜」
「え!」

私は思わず有栖川さんを見上げた。

「だから行く前に、君だけにはどうしてもキチンと言っておきたくて、不知火商事に行ってみたんだけど・・会社休みだったから。それで食堂に来てみたんだ」
「そうでしたか・・。有栖川さん。せっかく来てくれたんですから、お茶でも一杯飲んで行きませんか?」
「ごめん。フライトの時間が迫ってるから、もう空港に行かないといけないんだ」
「あぁやっぱり」
「そんな顔しないで。笑顔で僕の門出を見送ってくれよ」
「そうですね・・・はい」

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