純情シンデレラ
フライトの時間が迫っているのは本当なのだろう。
私たちの傍で待機していたタクシーに、有栖川さんが乗り込んだ。

「ジャンに許してもらえなくても、僕はフランスに留まる予定だ。だから、見上さんとは暫くの間お別れということになる。それがちょっとだけ寂しいな」
「私も寂しくなります。でも・・お元気で」
「君も。上手くいくといいね」
「え?何が・・あ!私、車の免許取りましたよ!」
「君なら大丈夫だって分かってたよ」
「じゃあ、何が“上手くいく”んですか?」
「・・・そのうち分かるよ」

有栖川さんはそう言うと、運転手さんに何か言った。
そして、タクシーのドアが静かに閉まって・・・有栖川さんは出発した。

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