純情シンデレラ
「実家に帰ってからずっとヤケ酒を煽っていた」と松本さんがポツリと呟いたのは、歩き始めて数分経ってからだった。

「そして私のことを避け始めた」
「君があいつとつき合っていると勘違い、いや、俺が勝手に早合点してしまったからな」と言った松本さんの横顔は見ていないけど、どうやら苦笑を浮かべている様子なのは、その声音から察することができた。

・・・なんか、この人のこと、もう許してあげたいと思った。
でもその前に、聞いておきたいことがある。

「どうして私を“みかみ君”と呼ぶようになったんですか」
「それが君の本当の苗字だろ?」
「そっ、そうです、けど・・・。もう私のこと、“けんじょう君”って呼んでくれないんですか」

数秒の沈黙の後、松本さんは「ああ」と言った。

< 456 / 530 >

この作品をシェア

pagetop