純情シンデレラ
「後はお嫁に行くだけね。恵子、会社で誰かいい男の人いた?」
「もうお母さんったら。私、会社へは仕事しに行ってるのよ。結婚相手を探しに行ってんじゃなくて」

お母さんの質問に即座に否定しておきながら、目の前にはなぜか、あの大柄な松本さんの姿がパッと目に浮かんでしまった。
私は思わず否定するようにギューッと目をつぶって、一瞬でも浮かんでしまったその存在を追い払った。
もう私ったらなんで松本さんの姿なんかを・・・きっと、痴漢のこととか色々あって、今日一番・・・“濃厚に”接した男の人だったからかな・・・。
それだけ強烈に、印象に残っちゃったってだけで・・・うん、きっとそうよ。

「私、21になったばかりよ。結婚する気はないわ」

世の中に、インターネットというものが誕生して、早数年。
これから情報産業は必ず伸びる。それも飛躍的に。
時代の流れをそう読んだ私は、専門学校に通って、情報処理の勉強をした。
それにこれからは、女性だって結婚しても働き続ける時代になるだろう。
男女同等、とまではいかないだろうけど、仕事の上で女性の地位は向上していくはずだ。
特に専門職は。
31になっても、たぶん41になっても独身だと思う私は、そのために社会に通用する技術や資格を持っていた方がいいと判断して、情報処理や簿記の資格を取得した。

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