純情シンデレラ
「お父さんも今日はこれくらいにしておいてくださいね」
「おいおい。俺はまだ1杯しか飲んでねえぞ」
「家に帰ってからも飲むんだから1杯で十分でしょ」とお母さんに言いくるめられて、お父さんはグッと言葉を詰まらせた。

「恵子ー?お花飾るの終わったー?」
「このテーブルで終わりー。あ、兼六屋のおじちゃん。緑茶持ってきましょうか?」
「おう、ありがとよ。ケイちゃんはいっつも気が利くなぁ。ぜひうちの息子の嫁に」

会えばいつも言われるおじちゃんのセリフに、私は笑って応える。
どちらもその気がないのは承知の上でのやりとりは、もう何年も続いていて、今では習慣と化している。
そして兼六屋のおじちゃんに緑茶を持って行ったのを機に、他のテーブルにも行って、欲しい人にお茶を淹れていたら、「恵子ちゃん。今日はお客なんだから早く食べちゃいなさい」と食堂のおばちゃんに急き立てられるのも、いつものことだ。
やっと席に着いた私に、お母さんが「冷めちゃうわよ」と言った。

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