純情シンデレラ
「もう恵子ってば。“会社には良い人いない”って言っておきながら、ちゃんといるじゃないの」
「え?やだっ。違うわよ!今日いけばなで、花束が重たいからって、松本さんが持ってくれて、そして送ってくれただけって言ったでしょ?あの人とはそういうんじゃないの!」
「そうムキになって否定しなくてもいいのよ」
「いや、だから・・」
「松本さんって良い人じゃないの。抜け具合も丁度良くて。私は好きですよ」
「ありゃあ“抜けて”んじゃねえ。“頼りねえ”ってんだ」
「あらお父さん。人はみーんな抜けてるところがあるんです。だから私はお父さんと結婚したんですよ」
「何だとっ!?俺のどこが間抜けなんだよっ」
「私は“抜けてる”って言ったんです。“間抜け”なんて言ってませんよ」

また始まったお父さんとお母さんの漫才的なやりとりに、私はクスッと笑ってしまった。
でも食堂に戻った途端、笑うどころじゃなくなった。

< 91 / 530 >

この作品をシェア

pagetop