純情シンデレラ
「とにかく午前中来てくれればいい。間違っても“君の”いつもの時間には来るな」なんて・・・何も「君の」という部分を強調して言わなくてもいいのに。
昨日の、松本さんとの内線での会話を思い出した私は、一瞬だけ眉間にしわを寄せると、すぐそれを止めた。
なぜなら今、私は営業課の出入口に立っているからだ。

すでに部屋にいる何人かが、私の方をチラチラ見ている。
不審者と思われたら大変だ!

気を取り直した私が「失礼します」と言ったとき、松本さんがスッと目の前に現れた。

「おはよう、けんじょう君」
「おはようございます、松本さん」

松本さんから全身を一瞥されて、私は不覚にもドキッとしてしまった。
火照っているかもしれない頬を抑えようと、思わず伸びそうになった両手を、意志の力でグッと押さえつける。
< 96 / 530 >

この作品をシェア

pagetop