お別れ記念日
彼に思いっきり抱きついた。
背中にまわした手、今度はもう離さない。
もう一度唇を重ねた。
さっきみたいな不安を抱えて求めるキスじゃない。
幸せいっぱいの温かいキス。
唇を離して宏樹さんを見ると、自然と笑みがこぼれた。
彼の優しい笑顔がわたしの心を満たす。
お別れ記念日は、婚約記念日だったのだ。
これから先、
嬉しくても泣くだろう。
悲しくても泣くだろう。
悔しくても泣くだろう。
単純なわたしはその時の素直な感情を出すだろう。
その時その時の、時間や感情を共有して生きていきたい。
わたしたちの物語はまだ始まったばかり──。
【完】


