失恋相手が恋人です
「沙穂、コッチ、コッチ!」

いつかの大学の食堂のように萌恵が手を挙げる。

今日は萌恵と月に一度の女子会の日だ。

社会人になってからお互いの環境は変わったけれど、電話だけではなく、会って話すことだけは二人で大切にしている習慣だ。

七夕が近い金曜日の午後七時過ぎ。

外気は近付く真夏の暑さをもう含んでいる。

白いフレアスカートの裾を翻して、私は急ぎ足で向かう。

「遅くなってゴメンね……っ」

今日のお店は最近新しくオープンした話題のイタリアンレストランだ。

私の勤務先から二つほど隣の駅前にある。

真っ白な壁に大きな窓が印象的な建物だ。

女子会のお店は、私と萌恵が交代で選んで、予約している。

今回は萌恵が選んで予約してくれた。

二人で前回の女子会の時に行きたいね、と話していたお店だった。

できるだけ早く仕事を終えたつもりだったけれど、既に萌恵は着いていた。

店の奥から手を振ってくれてる萌恵に近づいた時。

私の足が止まった。

「お久しぶり、沙穂ちゃん」

萌恵の向かい側の席で、ニッコリと相変わらずの美貌で微笑むその人は。

「……歩美先輩」

その人だった。






< 88 / 117 >

この作品をシェア

pagetop