桜龍

涼の過去

「俺ね、結構金持ちの家の出身なんだよね…鈴島コーポレーションって知ってる?」

鈴島コーポレーションって、今1番勢いのある企業と言われている内の一つだ

「俺の父親はそこの社長、母親はジュエリーデザイナー。俺の親は俺を産むだけ産んで後は好き勝手にやってる。外で愛人を作りその愛人に金を貢いでいる。」

あたしの親もそうだった…

「周りからは、羨ましがられたけど俺は周りのみんなの方が羨ましかった。」

わかるよ、その気持ち

『孤独。涼は、そう言いたいんでしょ?』

あたしと似ている

涼は、少し驚いた顔になり

「うん。お金で買えるものは全て手に入ったし、周りより満たされた生活をしていたのに1番欲しいものは手に入らなかった…でも、幼かった俺はいつか俺自身を見てくれると思い、勉強も何もかも頑張ったんだ…なのに…」

『見てもらえなかった…』

あたしと似てるんだ、涼は…

「おかしいよね、周りより満たされた生活してるのに贅沢してるのに…」

自分も同じだからこそわかる…

『涼が欲しかったのは自分自身を見てくれ誰かだったんだよね?金とか親の権力なんかじゃなく、自分自身を見て欲しかったんだよね…』

涼が驚いた

『今の涼には、白龍が涼自身を必要とし、見てくれるところじゃない。』

そう言えば

「白龍は俺にとってかけがえの無い居場所なんだよね…」

今の涼には、白龍のみんながいれば涼が壊れる事はないよね…

「うん、話を聞いてくれてありがとうね。スッキリしたよ。」

やっぱり薄っぺらい笑顔だったけど、話す前より薄っぺらくないから良しとしよう

『いいえ。』

役に立てたならよかった…

「紘ちゃんは、同情の言葉をかけないんだね…驚いたよ…」

普通なら「可哀想だね」「大変だったんだね」などと言われるだろう

『涼は、同情を求めていないでしょ?欲しかったのは大切な居場所を見失わないための助言でしょ?』

「さすが、紘ちゃんだね!」

この返答が答えだとあたしは捉えた

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