Mysterious Lover

「うわっ!」


ガチャアアン!


ガラスの砕け散る音、「くそっ!」と毒づく工藤さんの声。

構わずその脇をすり抜けると、振り返ることなく。
ガチャガチャって必死に鍵をあけ、部屋を飛び出した。


逃げなきゃ! 逃げなきゃ!


早く! 早く!


玄関はどこ!?


狭い廊下は、まるでトンネルの中みたい。


早く! 早く!


走っても走っても……あれ、進まない……?
足が、前に、出ない……?
どうして、体が動かないの……?
何? これ……


唐突に。
ぐにゃりと、視界がゆがんだ。
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