ネガティブ女子とヘタレ男子

千秋ちゃんの腕から離れ体制を戻す。目の前に座り直した千秋ちゃんは、いつもの可愛い顔とは違い、真面目な表情で私の話を待ってくれていた。

「…私はね、本当は凄く地味な子なんだ。」

「へ…?」

突然の話の切り出しに、キョトンと首を傾げる千秋ちゃん。確かにこんな話し出しはビックリするよね。と心の中で静かに反省した。

「小学校の時、おさげ髪でね。いつも本ばかり読んでる、クラスでも地味な子だったの。そんな私に話しかけてくれてたのは、一人の男の子だけだった。まあその子も、地味な私をからかってたんだけどね。」

はは、と笑い視線をずらす。彼の話をするだけで、心臓はズキズキと痛みを増した。

(千秋ちゃんに、彼だと話してしまったら…彼との間を引き裂くことになってしまうのかな…それは、できない。)

「その子が原因って訳じゃないんだけど、それから少しいじめ、みたいなのが始まって…高学年まで続いたそれは中学が決まってようやく落ち着いたの。それから、住む場所も皆と離れたけど…それでもかわらず私は一人だった。…そんな自分が嫌になった。それからは、親の離婚をきっかけにこっちに来て、今までの地味子な自分を変えるために高校デビューしましたとさ。チャンチャン。」

「チャンチャンって…無理に明るく終わらせなくても良いんだよ。」

「無理はしてないよ。最初はね、見た目だけ変えれば友達は出来ると思ってた。でも、それが違ったことに気づいて、千秋ちゃんの気持ちさえ私は心の中で踏みにじってたの。友達が欲しいと思いながら、誰にも心を開けずにいた…。でもね、この格好をして、千秋ちゃんと同じクラスになれて…今は心から良かったなって思ってるよ。大好きをたくさんくれる千秋ちゃんの事、私も…っ、これから、もっと好きになって良いかな。」

今まで抱えていた思いと一緒に、涙が溢れていく。エグエグと声をだしながら泣くなんていったい何年ぶりだろう…。そんな私を千秋ちゃんは「頑張ってきたんだね。」と背中をさすってくれた。

小さい掌を背中に感じて、千秋ちゃんの暖かさにもっと涙を溢れてくる。

「千秋、さやたんが大好き。だからね、さやたんが千秋の事好きになってくれたらすーっごく嬉しいなっ。千秋ね、こんなのだから…嫌われることが多いけど、っ、ね。さやたんに嫌われない様に努力するから…っ。」

後ろから聞こえる涙声に、耐えきれなくなった私は声の主に飛び付いた。強く強く抱き締めて、ありがとうをたくさん伝えた。泣き疲れた私達は、くっついたまま二人で眠りに落ちてしまっていた。

翌朝泣き崩れたお互いの顔を見て、あまりの酷さに自然と笑顔があふれた。



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