奇跡? ペア宿泊券と強引な天敵課長
「前に聞いたよな、どうしてクリスマスに仕事をするのか。お前は、多忙だし、他に予定はないし、一人だし、と答えた。だから、俺はお前に付き合うことにした」

そう言えば、毎年一緒に休日出勤やら、残業やらしていた気がする。
そして、いつも、ケーキやチキンを差し入れしてくれたような……。

「本当はもっと早く、こんな風に誘いたかったが、お前のガードが固過ぎて、さすがの俺も落としどころが分からず、情けないが、何年も手をこまねいていた」

驚愕の事実に目が点になる。

「偶然、お前がホテルの宿泊券を当てたのを見た時、このチャンスを逃したら、後はないかも、と思った。だから、強引だったが、こういう状態を作った」

ああ、そこは認めるんだ。本当に強引だった。

「なぁ、俺の自惚れかもしれないが、お前は俺を敵視しながらも、どんな時も避けずに、食らいついて来た。お前自身、気付いていないのかもしれないが、お前、俺のこと、本当は好きだろ」

エッ!

彼の言葉が、強固な要塞を一瞬で崩す。
ガラガラ崩れ落ちる砦の中から、甘酸っぱい感情が噴き出す。

「うん、その表情で、もう分かった」

課長は手を伸ばすと親指で私の口元を拭い、それをペロッと舐め「甘い」と笑う。

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