奇跡? ペア宿泊券と強引な天敵課長
当日はお姫様みたいなワンピースを着て、心躍らせながらホテルに向かい、その場に立ち尽した。

「うわぁ、きれい」

フロントに飾られた天井までの煌びやかなツリー。それに負けない庭園のイルミネーション。ホテル中がまるでお伽の国のように、キラキラ輝いていた。

私はそれを、ただ唖然と見つめるばかりだった。
あの時の感動が未だに色褪せない。

だからだろう、友人たちとのクリスマスも、恋人と呼ぶに足りない男友達とのクリスマスも、エンジョイできずトキメキもなかったのは。
男友達と別れたのは、そんな自分勝手な理由からだ。

それも就職するまでのお話。
勤労とお金の大切さを知ってからは、恋より仕事の毎日で、幸か不幸かズットお一人様だ。

故に、毎年クリスマス当日は、休日出勤も残業も厭わず働いている。
そんな私に呆れ果て、数年前から友人たちのお誘いもなくなった。

だから今年も聖夜は1DKの小さな部屋で、独り静かにワイングラスを傾けている……筈だった。
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