奇跡? ペア宿泊券と強引な天敵課長
当選手続きを済ませ、目録を頂き、帰ろうとしたところで、また草壁課長に邪魔される。帰ったんじゃないのか!

「確か、君には貸しがあったはずだが」

彼の目が目録を見る。

貸し? と一瞬考え、ああ、と思い出す。一か月前のプレゼンの件だ。確かに、あれは大きな借りだ。

「あの時は、ありがとうございました。これで帳消しですね」

棒読みでお礼を述べ、目録を差し出す。

「湯本、ちゃんと読んでいないだろ。あそこに、譲渡禁止。禁止項目に触れた場合、無効と書いてある」

顎で当選商品一覧の看板を指す。

だが、私の目は、注意事項より先に『残念賞:ティッシュ』の文字にいく。
なるほど、と課長の手にある三箱のティッシュに、勝ったと笑みが浮かぶ。
< 4 / 12 >

この作品をシェア

pagetop