草食系上司の豹変
「以上、担当者にネゴお願いします」

「かしこまりました!」

私はこの部署に配属されて3ヶ月の下っ端なので、雑用に走り回らされている。
でも、体育会系、こういうみんなでやるイベント大好き。テンション上がって楽しい。
まずは古巣である営業部の群れへとダッシュで向かった。




準備と段取り確認が進み、落ち着いてきた頃、会場の雰囲気に緊張が走った。

–––––––常務だ。

威圧感溢れるおじさん。
怖いのよね。口うるさくて、現場に来ては、決まってることをひっくり返されること、しょっちゅう。
みんな思っていることは同じみたいで、挨拶しても近づく人はいない。

私は幸運にも遠くから見守る場所にいる。

そこへ近づくのは、

……結城主任。

常務の鬼瓦みたいな顔が、わずかにゆるんだ気がする。

主任は、影で『おじさんキラー』と呼ばれている。
怖い常務も、気難しい専務も、噂では社長も、主任に対してはニコニコ……とまではいかないにしても、うっすら笑みくらいは浮かべ、素直に話を受け入れるという。

主任は、偉い人に話しかけるの、気遅れしないんだろうか。
やっぱり普通の人と感覚が違うのかな。


主任のおかげなのか、常務のちゃぶ台返しは発動せず、準備は無事完了した。


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