私のご主人様
「琴音、鎖をつけられたいのか。奴隷のようになりたいか」
「…」
「俺はお前を奴隷にするつもりはない。だが、お前が逃げるなら、そうするしかない」
拒否権なんか、ないくせに。
どうせ、私はこの人の機嫌を損ねれば捨てられるのに。
頬に手が添えられる。そんな手さえ、冷たく感じた。
「琴音、自分の首を自分で絞めるようなことをするな。お前を解放することはできない。だが、お前の未来を潰すつもりもないんだ。それだけは分かってくれ」
「…」
そんなこと…自由がないのに、そんなこと言われたって何になるの?
この人が何をしたいの…?
「あーあ。若、回りくどすぎ。一言で言えばいいじゃん。ちゃんと働いてくれたら…」
「伸洋、黙れ」
「へーへ。ここちゃん、若はここちゃんのこと結構気に入ってるんだよ。だから、勝手にもうお外行かないでね」
伸洋さんの言葉は途中で遮られて、肝心なところは聞けなかった。
車に乗っている間ずっと、季龍さんは私を降ろそうとしなくて、ずっと膝の上に乗ったままだった。