注文の多いクリスマスイブ
「で、返事は?」

急に顔を起こして不安げな顔を見せた智宏に、にっこり笑って返事をした。

「うん、こちらこそ、よろしく」

言い終わるか終わらないかのうちに、唇を塞がれる。塞いだ智宏の唇からは、微かに安堵の息が漏れた。
長年慣れ親しんだ筈のキスに、私の体温は一気に上昇して、いつもより数段フカフカのベッドにゆっくりと体が沈められてゆく。

「ちょ、ちょっと待って…」
「待てない」
「シャ、シャワーとか…」
「家で浴びてきただろ?」

確かに、浴びた。智宏の勧めるままに。
彼は私のワンピースを上機嫌で脱がせて、下着姿の私を嬉しそうに眺めてから、耳元で囁いた。

「俺、実は黒のレースが一番好き」

その一言に、私はハッとする。
シャワーに、この髪型に、この下着。
もしかして、今日彼がやたら送ってきたメッセージの数々は……

「今頃気付いた?」

ドッキリが大成功したみたいに得意げな顔で私を見下ろす彼。
でも、悔しいけれどその瞳はいつもより何倍もセクシーだった。

注文の多いクリスマスイブ。
たまには、こんな素敵なホテルで。
彼に食べ尽くされてしまうのも悪くはない。

《The End》
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