そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
「こんなものしか作れなくて、恥ずかしいんだけど」


小さな丸テーブルに作ったものを並べながら、恥ずかしそうに微笑んでみせる。


「そんなことないよ、すごくおいしい」


いただきます、と言ってから、一口食べると、慎吾は満面の笑みを浮かべた。


「......よかった。自信なかったけど、そう言ってもらえて嬉しい」


ふふって笑ってから、私も慎吾の隣に座って、食べ始める。


うん、完璧ね。

おいしいに決まってるでしょ?

自分が食べるために料理をするなんて面倒だけど、セレブを手に入れるためなら別。

そのために料理教室に何回通ったことか。


「だけど、時間かかったんじゃない?
仕事で疲れてるのに、ごめんね。
......ありがとう」


申し訳なさそうに、だけども嬉しそうにそう言った慎吾に、よっしゃ!と心の中でガッツポーズ。

計算通りね。

慎吾みたいな小さい頃から高級なものを食べなれてるセレブは、意外と家庭的なものに飢えてるんじゃないかとの読み通り。

彼女が作った手料理、しかも自分のために時間のかかる手の込んだ料理なんて、ポイント高いはず。




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