そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
「とんこつラーメンと餃子、それから生中ひとつ」


ん?この声は......。
にんにんたっぷりのラーメンを味わいながら食べていると、隣の席から聞き覚えのある声。

ちなみにこの店は小さいので、カウンター席しかない。

その隣の席から聞こえてきた声に、そちらの方を見ると、やはり予想通りの人物。


「土曜の夜に、一人ラーメン?
まさか、もう九条慎吾と別れたの?」

「おあいにくさま、慎吾とは順調です。
今日もセレブデートを楽しんだところよ。
慎吾はラーメンが好きじゃないの」


私に気づいて声をかけてきた元カレの大輔にそう返すと、再びラーメンに箸をつける。

慎吾の前では、ラーメンって体に悪そうだし太りそうだし、私もあんまりかな~。同じ太っちゃうならスイーツが好きかも。なんて女子力高そうなこと言ってるけど、本当は私は、大のラーメン好き。

体に悪いものほどおいしいのよ!
甘いものも好きだけど、ラーメンと生中の黄金コンビには勝てない。

ラーメンを食べた分は、ジムで運動して取り戻せば問題なし。


御曹司やセレブならともかく、元カレに気をつかう必要は全くない。

豪快に音を立てて食べさせてもらうことにする。


「そんなやついるんだ」


そりゃいるでしょうよ。

信じられないといった様子の大輔とは、同棲中はよく一緒にラーメンを食べにいっていた。

そして別れてからも、お互いまだこの店に通っている。


「そっちこそ週末に一緒に過ごす女もいないわけ?」

「今は仕事も忙しいし、一人が気楽だから」


ふうん。まあ、どうでもいいけど。

セレブ男性がフリーなら食いつきたいところけど、元カレがフリーと分かっても、私にとっては関係のないこと。


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