そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
「そういえば、あいつ、九条だけど。
最近変わったよ」


注文したラーメンと餃子がくると、大輔は早速食べ始めたけれど、思い出したようにそう切り出した。


「どういう風に?」

「前よりも積極的に動くようになったし、ほとんどミスもしなくなった」

「そうなんだ。
きっとそれが、本来の慎吾だったんじゃない?」


職場での慎吾を見ることはないから分からないけど、大輔の話を聞く限りでは、良い傾向だ。

しかし、そう答えたとたん、不審そうな顔を向けてくる大輔は気に食わない。


「なに?」 

「いや、真由がそんなこと言うなんて意外だと思って。
結局あいつに惚れてるんだ。
残念だとか狙い目だとかさんざんこき下ろしてたのに、付き合い始めて情がうつった?」


好きか嫌いかで言えば、好きの部類に入ると思う。人も良いし優しいし、顔も悪くない。

情は、......まあキスもベッドも共にしている仲だ。それなりにわいててもおかしくない。


しかしなんと言っても、一番は、慎吾には御曹司という何物にも変えがたい素晴らしい特典つき。

財力権力御曹司さま。
そんなものには屈しない!という人も当然多いだろうけど、私は喜んで屈する。


拝金主義?金に魂を売ってる?
何と言われても構わない。

実際どんなきれいごとを言ったとして、お金がなくて困ることはあっても、たくさんあって困らないことは事実。


「慎吾には、最初から惚れてるわよ」


少し考えてから、私はそう答えた。




 

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