そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
「はあ?」

「お金で人の心は買えないけど、大抵のものは買える。 
大抵のものを持っている人間を、人は好きになったっておかしくない。つまり結果として、お金で人の心も買えることになるし、だから私は、"何でも買える人間"の慎吾を愛してる」

「いっそ清々しいまでのクズだな。
知ってたけど」

「正直者だと言ってほしい」


心底あきれたように、だけどちょっと笑いながらそう言った大輔に、私もにっこりと笑う。

そして、少し冷めたスープに口をつけ、生中のお代わりと餃子を頼んでから、持論を展開する。


「人間なんて昔からそんなもんよ。
あの有名なシンデレラだって、財力のない男だったらプロポーズを受けなかったし、白雪姫はキスしたのが王子じゃなかったら、きっと寝たふりしてたわね」

「いやいや」

「たかが一回ダンスを踊っただけで、何が分かるって言うの?白雪姫に至っては、いきなりキスしてくる変質者でしょ?惚れる要素どこにあんのよ?何に惚れたかって、財力に決まってんでしょうが。

金のある男は女が放っておかないし、そして男は美人が好き。

王子だって、シンデレラが美人じゃなかったら、わざわざガラスの靴を拾わなかったし、白雪姫にもキスしなかった」


そもそも王子が王子じゃなかったら、シンデレラが美人じゃなかったら、物語が始まってさえいない。

逆の立場で、オバサンどころかオバアチャンくらいの年の女社長に、若くてイケメンの愛人がいる、なんてのもよく聞く話。   
 

つまり、時代やところ問わず、金のある人間には、シンデレラや私みたいなハイエナのような女や男がたかる、と。









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