そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
イケメンで、仕事もできて、リードしてくれて、セレブ。

高望みすればいくらでも上がいるけど、私は野心は強くても、身の程知らずではない。

できる男は、パートナーにもそれ相応のものを望むし、女慣れしている。

しかも、競争率も高い。


受付嬢をしているくらいだから、容姿にはそこそこ自信はあるし、自分磨きは欠かさないけど、モデル級の美女でもない私。

素敵なイケメン御曹司に見初められて......、なんて夢物語を夢見ているよりも、私は現実的な方法で、手に入れやすい王子さまを手に入れるべく、行動に移すことにしたのだ。


「世間知らずでだましやすそうな、お人好し三男御曹司なんて、まさに狙い目」 


セレブだけど、残念で、競争率も低い。

だからこそ、あえて、九条慎吾に狙いを定めた。


私と慎吾、それから元カレの大輔が勤めているオフィスビルは、B.C. square TOKYO。

都心にありアクセスもしやすく、なにより、年収一千万超えがゴロゴロいるといわれていることもあって、一度は働いてみたいと憧れのオフィスビルだ。

中でも私が受付で働いているミドルフロアよりもさらに上層階のアッパーフロアの人間は、セレブの中のセレブ。

アッパーフロアではないけれど、それにも匹敵する御曹司の慎吾。

あわよくば高収入の男を捕まえたいと野心を秘め、受付嬢になった私としては、格好の相手。


そんなことをつらつらと語っていたら、今まで他人の振りで視線を合わせなかった大輔も、私の顔をマジマジと見る。


「相変わらず計算高いな」


大輔はため息をつきながらも、私に視線を送ってくる。

あきれたような、軽蔑したような、ある種、感心したような。



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