そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
大輔は、嫉妬で言ってるわけでもなく、きっと心の底から、九条慎吾の魅力が分からなくて言ってるんだと思う。


九条慎吾、私と大輔より二つ年下の二十五才。

大輔の同僚でもある彼は、今の会社の系列会社の社長の息子で有名だ。

その他が多少残念でも、普通は御曹司というだけで、女がよってきそうなものなのに、やつに限ってはそうでもないらしい。


それどころか、御曹司(笑)社長の息子(笑)といった、笑いの対象。


仕事を任せれば、何かトラブルを起こす。
とにかく仕事が遅い。

合コンに行けば、気に入った女はみんな親友にもっていかれても、うまくいってよかったとニコニコ。

過去に結婚間近まで行きかけたと噂の彼女には、結婚直前に、パソコンと部屋にあった現金まで持ち逃げされたらしい。


極度のお人好しで、世間知らずの残念御曹司。

大輔の言うように、一般的には、金銭面以外ではあまり魅力を感じられないと言ってしまっても、過言ではないかもしれない。


だからこそ、私は九条慎吾に狙いを定めたわけ。


「逆に考えるのよ。
コネで入社できるほどのコネがあるんだ、と」

「はあ?」

「三男結構。
長男や次男より、よっぽど狙い目じゃない」







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