拗らせDKの偏った溺愛



そこからは、先輩の考えたシナリオ通りに事が進んでいった。


俺たちはアイツが通り過ぎた後、しばらく様子を見てから猛スピードで後を追いかけた。

先輩的にはアイツが直線に入ってから歩くスピードを落としたのが良かったらしい。

俺的には最悪だけど。


お前、さっき俺たちの横を通り過ぎるときに、ちょっと警戒して早歩きしてなかったか?

だったら、そのままさっさと横道にでもそれてくれれば先輩も諦めたのに…。

チッ、後は俺がなんとかするしかねぇか。

頼むから下手に抵抗して怪我とかすんじゃねーぞ…。



そしていざ、アイツが肩からかけている鞄の紐に手を伸ばした俺。

軽く引っ張ると、想像以上に簡単に肩紐がアイツの腕を滑ってきた。


やべ、このままじゃマジで奪っちまう。


そう思って、肩紐を掴んだ手を離そうとした瞬間だった。

思ってもみない力で俺の指に引っかかっている鞄の紐が引っ張られた。

驚いて、思わず


「うわっ」


と小さく叫んだ瞬間、ヘルメット越しに横から結構な衝撃があって、俺の体がバイクから浮くのを感じた。


やべ!


と思ったけど間に合わず、バイクをつかんでいた手が離れた。

何もつかんでいない状態になってしまった俺の体は、ただ地面に向かって落ちていくだけだ。

まともに受け身を取る余裕もなかったから、俺の体はそのまま地面に叩きつけられた…はずだったんだけど、その割には痛みが少ない。


気づくと仰向けに倒れていて、ヘルメットのシールドの向こうには春の青空が広がっている。

ってことは、やっぱり俺は背中から地面に向かって落ちたんだよな?

衝撃を覚悟したはずなのに、そんなに強い痛みがあるわけでもなく。

強いて言えばお尻を少々打ったかな、と言う程度。


不思議に思いながら体をゆっくりと起こした。

地面に手をついて体を起こそうとしたんだけど、地面?地面にしちゃなんか柔らかいよーな…。



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