こんな男に誰がした!


「わかった。これが最後。だから、一晩中抱いて。お願い。」

俺は無言で、さやかさんを抱いた。

今まで何度も体を重ねてきたが、おれ自身は、いつも冷静で、さやかさんと言う女の体だけを見ていた気がする。

だからと言って、決してさやかさんの体に溺れることはなかった。それが、高校生のやりたい盛りとは違うのかもしれない。

いや、初体験の時だけは、夢中だったかもしれない。

さやかさんには、申し訳ないと思うが、気持ちが伴わないのだから、仕方がない。

性欲を満たすだけで、さやかさんを好きになることは、なかったのだから。





俺は東京に戻り、弥生に会うための段取りを考え始めた。


7月の梅雨がやっと開けた頃、両親から、縁談があると言われた。

おいおい、まだ弥生と何も始まっていないのに、それはないだろう。


弥生なら、家柄や人物的にも、両親を説得できると言う俺の目論見は、どうなるんだ。

縁談の相手は、母の友人の娘。

あるパーティーで、母親同士が再会して、それからお互いに息子と娘を合わせようと、話が進んだようだ。

まったく迷惑な話だ。

弥生の前に、そっちをなんとかしないと、いけなくなった。

もうすぐ弥生も帰国するのに、時間に余裕がないじゃないか。
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