もう一度出会えたら
「大翔….」


そう言われると、もうそれ以上は何も言えなくなった。


『だから返事はまた今度聞くから…困らせたいわけじゃないのに勝手なこと言ってごめんな』


「ううん…」


『じゃあ、早く部屋に入ってゆっくり休めよ。』


そう言って私の頭にポンポンと手を置き優しい笑顔を見せる大翔。


「う…ん、ありがとう。おやすみなさい」


そして大翔は背中を向けタクシーの方に戻って行った。


そんな二人を見ている人がいたなんて分かるはずもなく、まさかの出来事にさっきまでのほろ酔いもすっかり覚め、しばらくの間大翔の歩いて行った方向をただぼんやりと眺めていた。


同じアパートの住人だろうか、女性とすれ違い我にかえると私も急いで部屋の中に入った。


その日は布団の中に入っても、体は疲れているはずなのに全然眠れなくて頭の中では今までの大翔との出来事やさっきの映像がランダムに流れていた。


大翔の事は友達として好き。


お互いのこともある程度は分かってるし優しい彼の事を好きになれたらきっと幸せになれると思う。
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