もう一度出会えたら
距離が近づきそのシルエットがハッキリと確認できた時、心臓がドクッと大きく波打ち二人に向かって動いていた私の足がピタリと動かなくなった。


なぜこにに彼が…いつ日本に帰ってきてたんだろう？


心臓の音がドキドキと自分の耳のすぐ側で鳴っている様な気がして、心の奥底からザワザワとした感情が湧き上がり体中を支配していく。


急に立ち止まった私を邪魔だというように、通り過ぎて行く人達が迷惑そうによけていくのに気づき、謝りながら慌ててその場を離れた。


人の邪魔にならないように隅の方に寄ると、沙羅が私に気づき視線をこっちに向けたのが見えた。


そして沙羅の視線を辿るように私に背を向けていた彼が振り返る。


彼が私の姿をとらえた瞬間、直前まで笑顔で話していたと思われる彼の表情が一瞬だけ固まったように見えた…。


私も自分が今どんな表情をしているのか分からないけど、うまく笑えているだろうか？


そして彼の唇が動き、私の名を呼んだ。


『菜々…さん…』


沙羅が私と彼を気にしながらも、二人から5m程の所で立ち止まったまま動かない私に声をかけた。
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