もう一度出会えたら
部屋から出ようと彼に背を向けドアノブに触れたその時、背後から聞こえたアラーム音に身体が飛び上がりそうになり「ひっ…」と小さな息が漏れた。


咄嗟に両手で口を押さえた為、思わず手にしていたバッグを床に落としてしまった。


そのはずみでバッグの中からストッキングが飛び出し、ボスっという衝撃音とナイロンの音が静かな部屋に響いた。


その直後、聞こえたシーツの擦れる音に、あぁ、見つかってしまった…と覚悟を決めるしかなかった。


暑くもないのに、背中を嫌な汗が流れ落ちていく。


おそらくアラームか私の発した音で目を覚まし、寝返りを打ったのだろう。


背後からこちらを見ていると思われる彼と目を合わせる勇気なんてあるわけもなく、振り返る事が出来ずに私は固まっていた。


アラームも、いつの間にか止まっていた。
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