17年ぶりの夜
オンナの見栄。
17年ぶりの高校の学年会はホテルの宴会場で開かれた。
学年会という集まりは、部活が一緒だった友人に久しぶりに会うチャンスだ。
港の見える船の帆の形が特徴のそのホテルはこの街のシンボル的なホテルだ。
担任の先生や、部活の顧問だった先生達も招待されていて、盛大に開かれるているところだ。

「サトミったら、いつの間に結婚してたの?」
と酔った瞳で私を見るのは、吹奏楽部で一緒だったユキだ。
私がトロンボーンで、ユキはトランペット。金管楽器同士で仲が良かった。

「まあ、いいでしょ。お互いにもう、35なんだから…
私が結婚してたら、おかしい?」と私が左手の薬指に付けた指輪をいじると

「さとみったら、ちっとも連絡してこないし…」
と頬を膨らませる表情は昔のままだ。

久しぶりに会う昔の友達だから、つい見栄を張ってしまう。
今の私が、バツイチの寂しい独り身だって
哀れまれたくない。

今日くらいは、明るく元気で真っ直ぐ未来を信じてた
あの頃のままでいさせてほしい。
そう思って、5年前に捨てられなかった結婚指輪を
アクセサリーの箱から引っ張り出して来たのだ。

「そうそう、コウヘイ君も来てたわよ。会った?」とユキに言われ、私は首を横に降る。

「探さないよ。高校卒業してからほとんど会ってないもん。
今さら会って、お互いにがっかりしても困るよ。」

宴会場の中はスッカリ中年に差し掛かった男女200人くらいが歩き回っている。
挨拶したり、バイキング形式に並べられたちょっと高級な料理をお皿にとって、食べながら、
笑いあっている姿を見回した。

もう、すっかり小じわやスタイルが気になるお年頃だ。
どの同級生達もハツラツとしていた姿ではなくなっている。

でも…コウヘイ来てるんだ…。

会いたいような、会いたくないような…。

野球部だった広い肩や、二重のくっきりとした瞳を思い出していた。




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