君は私の人生の、輝く太陽。
「・・・涼香、この家に戻ってこないか?」
私とお母さんがリビングに戻ってから30分。
それまで、楽しそうに話す私とお母さんを横目にテレビを見ていたお父さんが、口を開いた。
お父さんは、私の目を見て、真剣な顔をしていた。
そんなお父さんから、お母さんへと視線をずらす。
目が合ったお母さんも、真剣な顔をしていた。
「私は・・・っ」
"うん、分かった"
そう言えばいいのに、その言葉が喉に詰まったようになって。
口からはでてこない。
そんな私を見て、お母さんとお父さんは悲しそうな顔になる。
違う、違うの。
そんな顔をさせたいわけじゃない。
みんなには笑顔でいてほしいの。
ただそれだけで。
私が"私"であることに気づいて欲しいなんて思うから、みんなを悲しませてしまう。
「・・・私は、戻ってきたいよ」
私は涼香だと言い聞かせながら出した声は、予想以上に震えていた。
「ごめんね」
突然謝ったお母さんに驚いて、伏せていた目を上げる。
「涼香の悩みに、気付いてあげられなくて。お母さん失格よね。」
「そんなことない・・・っ!」
お母さんの瞳には涙が溜まっていて。
私は思わず声を張り上げた。
「涼香・・・」
お母さんは、まさか私が声を荒らげるとは思っていなかったのか、目を見開いて私を見た。
横に視線をずらせば、お父さんも同じ表情で。
「お母さんもお父さんも、失格なんかじゃないよ・・・っ!」
私の目の淵にも涙が溜まっていく。
これがなんの涙なのかは分からない。
分からないけれど溢れてきて。
一生懸命こぼさないようにするけれど、溢れてくる涙に抗うことなんてできなくて。
「涼香・・・っ」
2人は私のことを抱きしめてくれる。
ほら、やっぱり。
2人は失格じゃない。
抱きしめてくれる2人からは、優しさと、たくさんの愛情が伝わってくる。
それはとても嬉しくて。
昔の、事故に遭う前の私だったら、素直に喜べただろう。
でも今は違う。
胸にある黒く濁ったもの。
それは罪悪感で。
私が涼香ではなく遥香。
その事実を親に言う勇気がなく、涼香として生きている。
言い方を変えれば、私のことを涼香だと信じている親を、私が生きやすいように利用しているんだ。
嬉しかったのは最初だけで、抱きしめられていることに対して、胸の中を罪悪感が占めていく。
もう、嫌だ。
こんな自分なんて、嫌いだ。
なんで素直に"私は遥香だ"と言えなかったんだろう。
なんで、なんで。
そんなことわかってる。
私の勇気がなかっただけ。
ただそれだけなの。
ねぇお母さん、おとうさん。
ごめんなさい。
謝っても謝りきれないけれど。
それでも。
心の中でどんなに謝ったって意味がない。
そんなこと分かっているけれど、心の中でしか謝れない私は、弱くて臆病で。
涼香として生き始めてから、どんどん自分を嫌いになっていく。