聖なる夜に~涙はそっと絡め取られて~
「まだ早いですから、もう少しお休みになっても大丈夫ですよ」
身体を起こそうとするあたしを制して、島崎さんは近づいきた。
そして胸ポケットから何かを取り出す。
「……これ、受け取ってください」
彼が手渡したのは、一枚の名刺。
裏には手書きの番号とアドレス。
「私用の携帯番号とアドレスです。昨夜のことを一夜限りのことにするのか、それともこれから新しい恋を始めるかは、梓さん、あなたに託します」
……あたしは手のなかの名刺を見つめる。
選択権はあたしにあるらしい。
「僕は連絡が来ることを待っていますよ?」
彼はいたずらっぽく、囁いて、昨夜のように、頬にキスを落とした。
一夜限りにしなくてもいい?
この胸にあるドキドキを飲み込まなくてもいい?
「それでは、僕は本日の仕事があるので、ここで。ごゆっくりお過ごしください」
彼はあたしから身体を離して、歩いていく。
「……島崎さん!」
去っていく彼に呼びかけると彼は不思議そうに振り返る。
「……必ず、ご連絡いたします!あなたと新しい恋を始めたいです」
こんなに素敵なクリスマスカードってない。
彼がくれた名刺を握りしめて、あたしは微笑んだ。
**fin**

