聖なる夜に~涙はそっと絡め取られて~
朝。12月25日。
目覚めると、まだ暗闇のなか、シャワーの音だけがする。
島崎さんが使っているらしい。
昨夜のことは一夜限りのことだろうか。
毛布に包まりながら、考える。
「きっとそうよね」
間抜けな女に、島崎さんが同情したんだわ。
そう結論付けると、胸がズキッとした。
雄大に別れを告げられたときも、ここまで痛まなかったというのに。
毛布を頭まで被り直すと、シャワールームの扉が開いた。
「もしかして、梓さん、起きてます?」
動いたところを見られたらしい。
既にスーツを着た彼がそう声を掛けてくるから、あたしは毛布から顔だけ出した。
「おはようございます」
「あ、えっと、おはようございます」
一夜限りの人、なんて、今までいなかったから、どう接すればいいのか分からず、少し言葉に詰まった。