極上な彼の一途な独占欲
『あ、美鈴? そろそろ仕事終わる頃かなと思ってさ』

「まだ終わってない」

『そうなんだ。待ってるから飲まない?』


なにを言っているの、この人。


「…なんで私がヒロと飲むのよ」

『だって、懐かしいからさあ。ちょっと話したいんだもん』


いつもこうだ。

いつもこう、私だけが空回り。ヒロはどんなときも悪びれず、私が傷つこうが反省もなく、『だってさあ』で始まる言い訳で許される気でいる。


「私は話したくない。もうかけてこないで」


通話を切り、今度こそ番号をメモリから削除してやろうかと思った。

けれどできないことはわかっていた。

仕事柄、登録していない番号からの着信にもすべて出なければならない。それがヒロからだったりしたら、その不意打ちのほうがこたえる。

だったら残しておくほうがいい。

仕方ない──…。

悔しくて唇を噛んだ。なぜこんなふうに、自分に言い訳している気分にならなきゃいけないの。

伊吹さんのところに戻ったとき、彼は誰か女の子と話している最中だった。

葵ちゃんだ。

猛烈な勢いで頭を下げ、なにか謝っているような感じだ。伊吹さんが優しく微笑んでなにか伝えると、葵ちゃんは顔を真っ赤にして首を振った。

伊吹さんはそれを見て、おかしそうに笑った。

笑った…。

再びぺこりと一礼した葵ちゃんが、その場を離れてすぐ、私に気づいた。


「あっ、美鈴さん」

「どうしたの、なにかあった?」

「あの、今朝仰っていた、部屋に人を入れるなという件で。私、同じ事務所の、ほかのブースを担当している子を入れちゃったことがあって…」

「それを伊吹さんに謝ったの?」
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