極上な彼の一途な独占欲
ひとりになりたい。
遅めの昼食を取ろうと思ったものの、知った顔に会ってしまう場所では安らげなそうなので、うろうろと場所を探した。
施設内の飲食店は少なくいつも満席だし、そもそもお客様優先だ。
迷った末、コンビニで軽食を買って敷地の外れで食べることにした。
搬入用の機材がごちゃごちゃと積んである、誰も来なそうな奥まった場所。コンクリートの段差にじかに腰を下ろして、サンドイッチとコーヒーを広げた。
「美鈴って、居場所ないの?」
ひと口も食べていないうちから、知った顔に出くわした。
愕然として見上げた私を、にこっと笑って見下ろしているのは、ヒロだ。
え、なに、私、GPSでもチェックされてるの?
「ここ、関係者駐車場への近道だから、業界人はけっこう通るよ」
「あ、そうなの…」
許可も求めずに隣に座り、サンドイッチに勝手に手を伸ばす。
「俺が追いかけてきたと思ったんだろ」
「駐車場に行くところだったんじゃないの?」
「なあ、なんでそんな態度なの。俺に謝らせたいの?」
私は額に手を当て、息を吐いて気持ちを落ち着けた。
この男とも、つけなきゃいけないけじめがある。だけどどうつけたらいいのかわからない。
昔のことを話そうとしたところで、私が一方的に恨みつらみをぶつけるだけの、不毛な会話にしかならない気がする。
あまりに痛い別れだったから、思い返したら心が荒みそうで、考えないようにしてきた。記憶を封印する努力しかしてこなかったせいで、本人を前になにか訴えられるほど整理できていない。
「…謝ってほしいわけじゃ」
「じゃー謝んない。ごちそうさま」
三個入りのサンドイッチのひとつを本当に平らげてしまってから、ヒロは身軽に腰を上げ、駐車場があるらしい奥のほうへ足を向ける。
少し先で振り返り、モッズコートのポケットをごそごそ探ってなにか取り出し、「美鈴」と声をかけてこちらに投げた。
両手で危なっかしく受け止めたものは、コンビニのおにぎりだった。