極上な彼の一途な独占欲
あれ…。

これ、聞かないほうがいい話?

私は落ち着かなくなって、コートのポケットに手を入れた。

伊吹さんがそんな私をちらっと見る。


「まあ、要するに考え事だ」

「あっ…そういうことですか」


安心したのが、あからさまに伝わってしまった気がして、言ってから焦った。


「あの、伊吹さんもそんなこと、あるんですね」

「そんなこと、とは?」

「ええと、考え事で眠れないなんて」


笑いに紛らせようとしたんだけど、失敗したらしい。

伊吹さんはじっと私を見つめ、やがて音を立ててノートPCを閉じた。


「お前がなんであんな非道な勝手を言えたのか、よくわかった」

「え?」


PCを小脇に抱えスツールを降りる。


「俺なら、はいそうですかと消化できるとでも思ってたのか」

「…あの」

「一晩悩む自由もないのか」

「え…」

「想像すらしなかったんだな」


冷たい一瞥を私に投げて、行ってしまった。

長身の後ろ姿が、スタッフに声をかけながら搬入口のほうへ行くのを、声もなく見送って。

見えなくなった後も、私はしばらく立ちすくんでいた。

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