極上な彼の一途な独占欲
しかし伊吹さんは、もうその先を言う気をなくした、というメッセージを、軽く肩をすくめることで伝えてみせ、廊下から消えてしまう。

え、…え?

私はよその会社であることも忘れ、えーっと心の中で叫んだまま、しばらくそこに突っ立っていた。

えーっ…。

ねえ、これ、どういう事態…。


* * *


「うーん…」


なるべく顔に出さないよう、喉で呻き声をあげた。隣の暢子も同じ状態。反対隣の伊吹さんは、テスト開始からずっと無表情なのでわからない。

伊吹さんの紹介してくれた講師の方から指導を受け、目覚ましく成長したコンパニオンたちは、今日のテストも自信に満ちて、次々クリアしていった。

ただひとりだけ、どうしても緊張に負けてしまい、実力を出し切れない子がいる。私から見てもこれは…と唸ってしまうレベルなので、伊吹さんの中ではもう名前が黒く塗りつぶされているだろう。

どうにか救済してあげたいけれど…どうしたら。

ロールプレイング形式のテストの、出題者を担当してくれている講師さんも、なんとか返答を導き出そうとしてくれているのがわかる。


「もういい、わかった」


鋭い声がそれを終わらせた。当然ながら伊吹さんだ。

女の子が泣きそうな顔で、別室へと下がる。


「あの、伊吹さん、今の子も、特別レッスンを受けさせますので…」

「そうしてくれ。それと今、メインステージ横にサブステージを作る計画がある。子ども向けに簡単なプレゼンをする予定だ。ものになるまで彼女はそこに置くように」


…え?


「使っていただけるんですか」

「一人切ったところで、たいして金も浮かないからな」


手元の採点表を頭から確認しながら、そんなことを言う。まじまじと顔を見ていた私に気づくと、にやっと笑ってみせた。

暢子が立ち上がり、晴れやかな顔で手を叩く。


「では、テストも早めに終わりましたし、せっかく先生がいてくださるので、予定の時刻まで研修とさせてください。先生、お願いできますか?」

「もちろん。さっきみなさんが苦手そうだった部分をさらいましょうか」
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