極上な彼の一途な独占欲
メタルネイルを施した手を口に当てて、わざとらしく声を立てて笑ってみせる。

私は情けなくも、ちょっとさみしくなってしまった。

えっ、なに、違ったの?

神部が机越しに、よしよしと私の頭をなでてくれる。そしてにっと笑んだ。


「あたしはどっちもありなんだって言ったでしょ」

「え…」

「伊吹さん、遅くなりましたけれど、来週お食事にお誘いしても? 狙ってたところの予約が、ようやく取れたんです」


髪が短くなって、整った顔立ちが目立つようになったので、よけい迫力が増したかもしれない。

伊吹さんは戸惑いひとつ見せず、「ぜひ」と余裕の返事をした。

えっ…。


「嬉しい。ご連絡しますわね、この小うるさい雌犬のいないところで」

「申し訳ない、気を使わせて」


えっ、待って。

"そっち"も継続中ってこと?

どっちもありって、そういうこと?

愕然とする私を横目でちらっと見た伊吹さんが、神部に向き直った。


「ただし、逆は勘弁していただきたい」

「逆とは?」

「俺のいないところで、こいつを誘うようなまねのことです」


ぞんざいに私を指さしてみせる。

神部は明確に答えず、「あら」と微笑みを浮かべた。


「意外に独占欲が強くていらっしゃる」

「いや、俺の問題でなく。本気で来られたら、よろめきそうな気配があるので」


なっ…!
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