極上な彼の一途な独占欲
翌日の日曜日はさらに混雑が増していた。

土曜日に来た人たちが『記事の通りだった』と拡散したらしい。ネットの威力のすさまじさを思い知る。


「うう…痛…」

「どうした」


数時間ぶりに取れた休憩時間、控え室に向かう途中で肩を押さえていたら、ちょうどやってきた伊吹さんに心配そうにされてしまった。


「怪我か?」

「あっ、いえ。モデルの通り道作るのに壁やってたら、筋を違えちゃって」


とにかくすごい人だかりなので、モデルに誘導をつけるだけじゃ足りずに、手の空いているスタッフ総出でお客様整理をしなきゃならなくなったのだ。


「コンサートスタッフみたいだな」

「まさにそんな状況でした…」


同情気味に伊吹さんも眉をひそめる。彼は彼で、あちこちで勃発する揉め事やアクシデント対応に走り回っていた。


「無理するなよ、まだあと一週間あるんだ」

「大丈夫です、明日は休みいただいてますし」

「え」


大きい控え室のほうに荷物を置いている私は、小さいほうへ向かう伊吹さんと別れようとして、彼のあげた声に足を止めた。


「なにか?」

「いや」


彼も、別方向へ行こうとしていたのをやめ、立ち止まっている。片手をポケットに入れた、すらりとした立ち姿が、数歩先でためらうように足を踏み変えた。


「俺も明日休みなんだ」

「え…」


記憶がよみがえってきた。

翌日が休みだから飲もう、と初めて彼に誘われた、あのときのやりとり。そうか、あれからもう一週間。いや、まだ一週間。
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