極上な彼の一途な独占欲
「中山さん、うちの社員にもヘルプ頼んだ。ホテルに泊まってる人間もいるから、早ければ午前中に4名そろう」

「よかった。ありがとうございます。あとわかりましたよ、この人込みの理由」

「なに? やっぱりメディア?」

「です」


そう言って中山さんが見せてくれた携帯の画面には、自動車ニュースサイトの記事が表示されていた。

『東京オートショー:満足度の高いブースランキング』とあり、伊吹さんのブースが国産勢を押さえて一位を飾っている。


「この記事が、昨日大手ポータルサイトのトピックにピックアップされてたらしいんですね」

「なるほど」


伊吹さんの手に渡った携帯を、私も覗き込む。ノベルティも質が高く、スタッフ対応も◎と…ふむふむ。ステージも評価されている。よし。

伊吹さんは、たぶん私とは違い、車に関する記述を読み込んでいるんだろう、熱心に画面をスクロールして隅々まで確認している。

記者の署名までたどり着いたところで、携帯を中山さんに返した。


「これ、なるべく早いタイミングでスタッフで共有して」

「了解です」

「天羽も」

「は、はいっ」


いきなり振られて、慌てて返事をした。

伊吹さんが、言い含めるような口調で私に話しかける。


「がんばってくれた成果は確実に出ている。それをみんなに伝えてほしい。もちろん気を緩めないように」


甘い笑顔なんてそこにはないけれど。もう誰もが気づいているだろう。この人がただの、冷たい鬼なんかじゃないことに。


「はい」


閻魔大王なんて、うまいあだ名だ。天国行きも地獄行きも、この人次第。そして努力は必ず見ていてくれる。

うなずいた私に、彼もうなずき返し、いよいよ混み合って来たブースを整理するため、シーバーで指示を飛ばしながら去っていった。

人混みの中でも、彼の凛とした背中は、紛れずに目で追うことができた。

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