極上な彼の一途な独占欲
質問で返すってことは、しないんだろうなあ。お金に困っていない男の人のライフスタイル、そのものに違いない。


「しますよ。モデルたちの栄養管理も仕事のうちですから。僻地に長期の泊まり込みになるようなときは、彼女らの食事も作ったりします」

「へえ」


しゃがみ込んで下段を眺めていた伊吹さんが、感心したように私を見た。


「そこまでケアするんだな」

「そういう約束で、事務所さんの大事な人材を預かるんですから」


私が隣に屈むと、なにやらまじまじとこちらを眺め、「最初から天羽に頼めばよかった」と残念そうに言う。


「いつでも作りに行きますよ。でもあの場所、飲食店はあっても材料を買える場所がないんですよね。そういうところだとやりづらいんです」

「なるほどな」


今回のホテル住まいは、会期が終了する頃には私でさえ三週間弱、伊吹さんは一か月近くの滞在になる。外食もお弁当も飽き飽きだという伊吹さんの気持ちはとてもよくわかる。


「中山さんが、夕食の弁当のオーダーが減ったって悲しんでた」

「みんな疲れてるので、部屋でゆっくり食べたいんですよね」

「気づいてたか? あの弁当、一度も同じのを取り寄せてないんだぜ。もうショーが始まって10日以上たつけど、毎日必ず違う」

「えっ、すごい。中山さんのこだわり?」

「というか、思いやりだろうな」


私も別の仕事ではお弁当を用意する立場になるのでわかる。予算や個数が決まっている中で、お弁当にバリエーションを出すのはものすごく大変なのだ。

けれど同じお弁当が続くと、やっぱり誰もががっかりする。

だからこういうイベントの機会に、他社が食べているお弁当はどこのかなんてチェックしたりもする。


「明日からはまたオーダーしようかな」

「そうしたいのはやまやまだが、それとこれとはなあ…」


とはいえお弁当そのものに食傷気味の伊吹さんは、前言をひっくり返すような発言をして、私を笑わせた。

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