クリスマスが終わる瞬間も
「なんで彼氏できひんのかな」
「知らん。お前がいつまで経っても子どもやからとちゃうんか」
「子どもちゃうわ」


確かに中身は全く成長しとらんけど、こんな素の態度で接するんは家族と直人だけや。樋口さんは緩い雰囲気やねって言われつつも、仕事はちゃんとこなしとるし、これでもイメージよりかは働ける女やぞ、うちは。

彼氏もおらんからお金は貯まる一方やし、貯金も任せろ。結婚費用ならすでにいい額までいってます。

その貯金のおかげで今回のホテル資金も出して、急やったから直人の分も結構負担してるんやぞ。


「どうせなら全額出せや」
「それはうちがきつすぎる!」
「ケチケチしとんな」


ケチやない!なんてそうは思いつつも、迷惑かけてるんはうちの方やし、顔を覗きこむようにうかがいながら機嫌をとる。


「ほら、ホテルのディナー美味しいし、景色も最高やろ?そんで可愛い幼馴染と一緒で嬉しいやろ?な?」
「鏡見て来い」
「腹立つな〜」


冗談やんか、冗談。別に本気で自分のこと可愛いと思っとるわけとちゃうし。ツッコミ待ちやのに表情を変えることもなく淡々と言われたら、しょっぱい気持ちになる。

この話はやめや!と皿の上に視線を落とす。


料理を口に運ぶ。美味しいってことは、それだけですごい。一口嚙み締めるたびに気分は上がる。

うちは物事に執着せんたちやしな。直人への複雑な心境はあっという間になくなる。


機嫌がなおったうちはそういえば、と直人に仕事の話題を振る。定期的に会うとはいえ多少は間が空くしね、近況報告や。


うちはただの総務部OLやけど、直人はちゃう。建築士で、こつこつと経歴を積んでいる。

昔から美術センスはあったし、会社勤めは似合わんしな。口数は多くないけど真面目な態度が評価されているらしい。


前に設計から監督まで直人がしていたレストランの話、年末の帰省のこと。話したいことはたくさんあって、話は尽きない。

笑って、からかって、怒ってみせたり。変わらん直人との空気が安心する。

デザートのカシスのアイスクリームまで食べ終わり、人心地ついたところでほんなら、とにっこり笑った。


「上行こか」
「は?」
「部屋。取ってるから」
「……は⁈」
「あれ、言ってへんかったっけ」


珍しくうるさい直人になんでそんな反応?とうちは首を傾げた。
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