聖なる鐘が響く頃

聖なる鐘が響く頃

BGMが静かに流れる薄暗い店内を、数人のバーテンダーが泳ぐように歩いている。
テーブル席はほとんど埋まり、中央に設置されたステージでは既に演奏の準備が整っていた。


壁際に確保した二人用の席で、店の入口と自分の腕時計を交互に見ながら彼女を待つ。

ひとつ前のテーブルではノースリーブのドレスを纏う女が隣に座る男にもたれかかっていた。



「……」



シェリートニックを煽りながら再び視線を入口に戻すと、ちょうど彼女が駆け込んできたところだった。