不器用な彼氏
車は真夏の国道を、海を目指して進んでいく。
初日の今日は熱海を通り越して、伊豆まで足を延ばす予定。午前中の内には、目的地に着いていたい。
車は、横浜町田インターから高速に乗り、小田原厚木道路を経て、箱根の手前で西湘バイパスへ。海が近づくと同時に、車の量も多くなり、バイパスに抜ける辺りから、断続的な渋滞が続いていた。
私は、昨夜の寝不足もたたって、ついウトウトしてしまう。
『…眠いのか?』
海成に声をかけられ、『ううん平気』と答えたけれど、思わず欠伸が出そうになり、無理やりかみ殺す。
『着いたら起こしてやるから、少し寝てろ』
『…でも、運転してもらってて、悪いし…』
『俺なら、お前と違って、よく寝たから気にするな』
そう言うと、海成は、後部座席から(これもお姉さんが用意しておいたのだろう)オレンジのブランケットを取ると、私の膝に置く。
『寝ると体冷えるから、これ掛けとけ』
『うん…でも、本当にいいの?』
『しつこい。中途半端に、ウトウトされている方が、気が散る』
『…じゃ、少しだけ…』
ここは、海成に甘えて、少しだけ寝かせてもらおう。リクライニングをほんの少し傾けて、受け取った肌触りの良いブランケットは、広げて肩まで掛ける。
渋滞の為に、ゆっくりと進む車の中で、流れるBGMは、スローテンポなラブソング。
その心地よさに、夢の畔に落ちるまで、そう時間はかからなかった。
無論、その直後に彼の口から出た『今、寝といてもらわないと…な』というつぶやきは、私の耳には全く届いてはいなかった。
初日の今日は熱海を通り越して、伊豆まで足を延ばす予定。午前中の内には、目的地に着いていたい。
車は、横浜町田インターから高速に乗り、小田原厚木道路を経て、箱根の手前で西湘バイパスへ。海が近づくと同時に、車の量も多くなり、バイパスに抜ける辺りから、断続的な渋滞が続いていた。
私は、昨夜の寝不足もたたって、ついウトウトしてしまう。
『…眠いのか?』
海成に声をかけられ、『ううん平気』と答えたけれど、思わず欠伸が出そうになり、無理やりかみ殺す。
『着いたら起こしてやるから、少し寝てろ』
『…でも、運転してもらってて、悪いし…』
『俺なら、お前と違って、よく寝たから気にするな』
そう言うと、海成は、後部座席から(これもお姉さんが用意しておいたのだろう)オレンジのブランケットを取ると、私の膝に置く。
『寝ると体冷えるから、これ掛けとけ』
『うん…でも、本当にいいの?』
『しつこい。中途半端に、ウトウトされている方が、気が散る』
『…じゃ、少しだけ…』
ここは、海成に甘えて、少しだけ寝かせてもらおう。リクライニングをほんの少し傾けて、受け取った肌触りの良いブランケットは、広げて肩まで掛ける。
渋滞の為に、ゆっくりと進む車の中で、流れるBGMは、スローテンポなラブソング。
その心地よさに、夢の畔に落ちるまで、そう時間はかからなかった。
無論、その直後に彼の口から出た『今、寝といてもらわないと…な』というつぶやきは、私の耳には全く届いてはいなかった。