不器用な彼氏
『海成、子供、好きだったんだ?』
『なわけねーだろ、うるさくてしょうがねぇ』
『ハハハ…だよね』

確かに、子供好きなイメージはない。
でも案外今みたいに、子供には好かれそうな気がするのは、なぜだろう?

『でも…まあ、気持ちはわかるからな』
『確かに、怪我じゃしょうがないけど、ユウタ君のお父さんも辛いよね』

てっきり、“ご両親の気持ちを酌んで…”と言う意味だろうと思っていると、海成に『何言ってんだ?』と、怪訝な顔をされ

『アイツ(ユウタ)の、“くらげの餌やりが見たい気持ち”に決まってるだろ?』
『…え?そっち?』

思わず、予想外だったその答えに、絶句し立ち止まってしまう。

『…プッ』
『何だよ!』

“何が可笑しい?”と、怒る海成の隣で、笑いが止まらなくなる。

ああ、やっぱり、この人から目が離せない。
子供が嫌いだと言っておきながら、無意識にも、子供の視点で物を考えてる。

それは、大人になるとつい忘れがちなもので、そういった見方ができるということは、ある意味、見習わなければならないことなのかもしれない。

純粋さ故…ということか?

私に笑われてムッとしたのか、憮然とした顔で歩きだす彼の手に、今度はこちらからそっと触れ、『怒った?』と問うと、『別に怒って無え』と一言。

さしあたり、手が解かれないところ見ると、本当に怒っているわけではなさそうで、ホッとした。
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