不器用な彼氏
ちらりと横を見ると、既にアイスを食べ終わって、目の前に広がる穏やかな海を眺める海成。

一年前には、こうなることなんて、想像もしていなかった。
フェンスに軽く乗せている海成の腕に、そっと寄り添ってみる。

『くっつくな…暑い』
『少しだけ…ね?いいでしょう?』

そう言うと、小さくタメ息をつかれるが、突き放されたりはしない。

がっしりと鍛えられてるその腕は、硬く引き締まっていて、自分とは明らかに違っている。
今更ながら、あまりにも違う体格差に、異性であることを意識させられた。

それと同時に、急に自分の若干肉付きの良い体形が、気になりだす…。

実のところ、密かに、今回の旅行に向けてダイエットを決行していたのだけれど、見た目でわかるほどの効果は、あまり出ていなかった。

もちろん女性的な、と言う意味では、肌のケアもしっかりしてきたけれど、あまりにも彼の鍛え抜かれたスタイルが良すぎて、少々不安になる。

そもそも元より大人の女性としての魅力は、皆無と言っても過言ではない私。加えて、良いのか悪いのか、年齢より若く見られてしまう童顔で、色気と言うものが絶対的に足りていない。

幻滅されたらどうしょう…。

『おい、どうした?』

いつの間にか、黙りこくってしまっていた私を不審に思ったのか、問われて『ううん何でもない』と作り笑顔で誤魔化した。

確かに、今更、心配しても仕方ないこと。ありのままの自分を受け入れてもらうしかないのだから。
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