不器用な彼氏
そういうと、彼女は突然笑い出して、『なんて不器用な男なのかしら!』と、独り言を言いつつ、

『あなた、舞い上がっていいのよ、それ』
『?』
『渚の言ったこと、あながち外れてないわ』

『あの子も何も知らないわりに鋭いわね』と、一人で納得すると、アラフォーとは到底思えないほど、綺麗で美しい顔で、今度は憂いを帯びた瞳で、懐かしむように語りだす。

『…実はね、それ、私が彼にさせた約束だから』
『約束?』
『約束っていうか条件かな?正直言うと、海成にあの頃「こんな関係もう辞めよう」って言われた時、実はもう前の男なんてどうでもよくなってて、海成のこと、本気になりかけてたのよ』

目の前の参列した商品を軽く手直ししながら、『ううん、多分もう好きになってたかな?』と付け加える。
“やっぱりそうだったんだ”…と心の中でつぶやいた。

『でも、さすがに5つも歳上だったし、引き留めるには、彼の気持ちが私に無さすぎるのもわかってたの…だから、実は悔し紛れに、条件を出したのよ』
『条件?』
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