不器用な彼氏
参拝を終えると、本殿の左側を周り、裏道のような路地を抜け、この神社にお参りに来たもう一つの目的である、国の天然記念物にも指定されている、御神木の大楠を目指す。

この神社には、樹齢2000年以上という、大楠があり、神々の魂が宿る木として、崇められているそうで、その幹の周りを、《一周すると寿命が一年延びる》《心願を唱えて一周すると願いが叶う》など、いくつかの伝説があるらしい。
 
『樹齢2000年以上だって』
『気が遠くなるな』

木々に囲まれた通路を奥へ進むと、突然目の前に、大きな樹木が現れる。
明らかに見たこともない大きさで、近づくにつれ、その全貌の圧巻さに、言葉を失う。

その太い幹はもちろんのこと、見上げた先に広がる枝と葉が、巨大な森の如く、生い茂る。
周辺の木々の中で、何処までが、この幹から生まれているのか、その境界が分からないほどに…。

『凄いね』
『ああ』

御神木の周りだからなのだろうか?

取り立てて、感受性が高いわけでもないのだけれど、何故か、この周りには、明らかに他とは違う空気が流れているような気がする。

隣を見ると、同じように天を見上げるように空を仰ぐ、海成。

『一周廻ってみるか?』

海成に言われ、うなずくと、どちらからともなく手を繋ぐ。
そういえば、今日初めて手を繋いだかも?などと、思いながら、そのぬくもりに頬が緩む。
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